しあわせなキャット

小さいころから猫が好きだった。

近所には野良猫がたくさんいた。

うちで飼いたいと親に何度か訴えたが、

そのたびに兄が喘息だからという理由で断られた。

仕方なくnintendogs+cats(3DSのソフトウェア)で自分だけのワンちゃん、猫ちゃんを愛でることで欲求を発散していた幼少期だった。

高校生になってからは保護猫、地域猫の存在を知り、

毎週地域猫のボランティアのお手伝いをしたりしていた。

社会人になり、ある程度一人暮らしにも慣れたころ、

譲渡会に出向き、2匹の保護猫をお迎えした。

今はその2匹の猫と暮らしている。

そんな猫に縁の多い生活をしているが、

今まで出会った猫たちのなかでも特に印象に残っている子がいる。

数年前、わたしが毎日牛の乳を搾っていたころ、

働いていた牧場で暮らしていた猫のうちの一匹だ。

名前はとくにない。

だが、とにかく幸せそうな顔で眠る猫だった。

ある日、

朝の仕事が終わり、みんながいなくなってから

青空の下、道のど真ん中ですよすよと寝ている猫をみつけた。

近づいてもお構いなしに睡眠を続けている。

わたしはそれを見て

しあわせなキャットだ、と思った。

もちろん人にはわからない苦労もたくさんあるのだろう。

しかしその瞬間、その光景はわたしにとって平和の象徴のように見えた。

この穏やかな時間が、この猫に少しでも長く続くことを祈った。

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